唇を寄せたとたんがぶりと噛みつかれ、口内の唾液をさらいつくすように舐められる。もっと、とがっつく南泉をなんとか受け止めながら、思っていたより深刻な事態かと山姥切はぐっと気合を入れた。
霊力パスがうまくつながらなかったみたいで、と主は申し訳なさげに頭を下げた。
「主、とりあえず頭を上げてくれ。将たるもの、簡単に頭を下げてはいけないよ」
「いやでもこれはさ、ある意味おれのせいじゃん。今までこんなことなかったけど、もしかして皆腹減ってたのかな。山姥切の時はどうだった!?」
「俺は何の問題もなかったよ。皆も問題があればすぐ相談するさ。ほら、こんのすけが返事を持ってきたよ」
「こんこん! 担当さんなんて!?」
小さな管狐に飛びつく成人男性を胡乱気に見る古馴染みに視線を向ければ、まっすぐ山姥切を貫く金緑の眼。大丈夫なのかとあからさまに問うまなざしには苦笑いを返すしかない。基本的に良い主なのだ、刀思いの。ただ少々大雑把で勢いが良すぎ空回る時があるというだけで。まあ、今回ばかりは焦るのも仕方ない。なんせ顕現した刀剣男士の霊力が不足している、なんて緊急事態だ。
「南泉、体がふらつく以外の自覚症状はあるかな? どんな些細な事でも構わない」
「……とんでもなく腹が空いてる、気がするにゃあ」
この辺がぎゅうぎゅうする、と胃の上を抑える仕草につい笑みを浮かべそうになり慌てて気を引き締める。かわいさに和んでいる場合ではない。人の身をとったばかりで不具合だなんだと大騒ぎされているのだ、きっと不安だろう。ここは本丸の先達として頼りになる所を見せたい。
「俺たちの肉体は基本的に主の霊力で動くからね。今は人の子でいうところの絶食状態だ、腹もすくさ」
「じゃあ食えば解決か?」
「本丸で育てられた野菜や果物からも霊力はとれると聞くけど、どうだろうね」
言外に、それならこうも慌てて政府に問い合わせないと伝えれば、納得したのか押し黙る。話すのさえもつらいのだろうか。
静かに座し、瞳を閉じて動かない南泉は美しい彫刻のようで山姥切はほんの少し不安になる。確かに生きて動く刀剣男士かと膝にふれれば、金色のため常は目立たぬまつ毛がふるりと揺れた。どうした、と問うてくるまなざしに微笑みを返す。ああ、早くこの不調が解決すればいい。せっかく同じ本丸に所属したのだ、早く南泉と丁々発止のやりとりをしたい。
「山姥切ぃ~、うちにいるヤツらで南泉と親しいのってやっぱ徳美関係? 他にもいる?」
「そりゃ俺たちさ。一文字の刀はまだうちには来ていないからね」
こんのすけを通じて政府から指示を受けていたらしい主が、なにやら考え込みながら問うてくる。親しいというならば、と胸を張れば隣からは「うげぇ」と嫌そうな声が投げられる。そのくせ否定しないのだから、この南泉は素直な性質なのかもしれない。それとも口喧嘩を吹っ掛ける気力もないのだろうか。
「なんか慣れ? おれの霊力と馴染んだら問題ないらしーんだけど、ちょっと時間かかるんだって。だから手っ取り早く霊力供給ヨロ! って担当さん言ってたし、よろしくな!」
「ヨロ、とはおっしゃってないですよ担当殿は。こちらの霊力と馴染むよう対策をとりますが、とりあえず今の不足分を補充しておいてくださいとのことです」
「腹ペコつらいもんな~」
「協力はいくらでもするけれど、俺はなにをすればいいのかな」
「だから霊力供給」
「うん?」
「あれ? 知らない感じ? これ超有名っつーか基本事項なの審神者内だけ??」
首をかしげる主と山姥切の間に爆弾を落としたのはこんのすけだった。いや主にもこんのすけにも基本事項で、まったく爆弾ではなかったらしいが。
「もっとも効果的なのは性行為ですね。今風に言うならセックスでしょうか」
「セッ、……」
「いやいやいや、さすがにそこまではお願いしないって。キスだよ、キス。体液から霊力もらうのが効率的らしくてさ、でも血だと南泉満足するレベルだとおれ死んじゃうらしーのね? さすがに出血死はイヤじゃん? あといくら主でーすつっても初対面の人間とキスするの南泉もイヤだろ。おれもさ、どんだけ美形でもやっぱ初対面はね~困るし。その点山姥切ならさ、古馴染みでずっと一緒にいたんでしょ?」
確かに本霊は長く共に在るが今ここにいる一分霊としての二振りは初対面、だが親しいと言えば俺だよと胸を張ってしまったのは山姥切である。いくら親しかろうとキスは別では、というツッコミは主のまっすぐなまなざしにかき消えた。これ肩組んだりハグしたりと同じ流れでイケるって信じてる顔だな……頬をひっつけられるなら唇も皮膚の続きだし問題ない、かな? 唾液、と言われると構えてしまうが肩に持たれて寝る猫殺しくんのよだれがついたこともあったし。あの時も別にさほど嫌ではなかったな。
うんうん考える山姥切は、正しくこの審神者の降ろした刀剣男士であった。要はちょっと大雑把で勢いが良いが空回る時もある。南泉相手ならなんの問題もないだろ、と雑に結論付けたのが伝わったのか、審神者とこんのすけもホッと胸をなでおろした。山姥切がダメなら鯰尾か物吉、後藤にお願いしなければいけなかったので。頭では短刀は閨事に詳しい者が多いしそもそも云百年レベルで年上だと理解していても、見た目が幼いというだけでどうにもそういうことは言いにくい。せめて五月雨がいればよかったけれど、この本丸にはまだ来ていなかったので。
「じゃあお願いな山姥切! マジ助かる! 南泉もう動きたくなさそうだし、とりあえず回復するまでこの部屋で休んでてくれていいから」
「任せてくれ。この腹ペコ猫殺しくんは俺が責任をもって腹いっぱいにしよう!」
まあ口吸いくらいなら別に減るものでもなし、持てるものこそ与えなくては(霊力を)。と気軽に引き受けた山姥切は、唇を寄せたら最後だなんて想像してもいなかった。
◆◆◆
足りぬ足りぬと喉の奥まで舌を伸ばされ、飲み干すどころか口内の柔らかい部分をこそげとる勢いでかじりつかれる。息苦しさのあまりにじんだ涙も南泉の唇で拭われ、ちゅ、と行為のわりにかわいらしい音が響いた。
「もっと」
舌を引っ張り出され、表も裏も舐め吸われ、唾液の生産が追い付かない。少し待て、と伝えたいのに山姥切の舌は南泉の口中に引きずり込まれたまま戻ってこない。
「やまんばぎり、もっとくれ」
唇を離すことさえ避けたいのか、山姥切の口にかじりついたまま南泉が請う。ボタンを押せば出てくるドリンクサーバーではないというのに、あごのつけねを押した際に唾液が出たから学んだのだろう。頬や喉仏を撫でたり押したりと忙しない。落ち着けと伝えたくとも、口を開くたび南泉の舌が潜り込むためなにひとつ言葉にできない。平気な顔をして座っていたから、まさかここまで飢えているとは予想もしなかった。主とこんのすけが席をはずし、二振りきりになったとたんに豹変したのは山姥切への信頼からだろう。ならば応えてやらねばならない。南泉が落ち着くまで求められる限りの霊力を与えてやらねば。そのためには唾液を。
酸っぱいものを想像すればいい、とどこから得たのか不明な知識から必死で梅干しのことを考えれば、先ほどより少し出た気がする。南泉の手が山姥切の頬から後頭部にまわり、よくできたとばかりに撫でられる。髪を梳き、指先でやわやわと耳殻の形を覚えるように触れ、うなじを揉まれる。マッサージでは唾液は出ないが、とつい笑いが込み上げてしまう。本霊の頃にいやというほど人の子は見てきたが、どうしたら大量の唾液が出るかなんて気にしたことがないから知らない。涙なら悲しみや痛みで出るのに、血液ならば切るだけで最も簡単に出せるのに、ここまで飢えていてもそちらを選ばないのだ、この男は。刀の付喪神のくせに。
「南泉、ねえ、キミさえよければ血を」
「いらねえ」
「でも一番回復が早いよ」
「うるせえ」
純粋な好意で告げているというのに、黙れとばかりにまた口に噛みつかれる。南泉の両腕が山姥切の腕ごと胴体をしめつけているのは、抱擁というより拘束だ。おまえいらんことすんなよ、と無言で主張されている。断られる前に切ってしまえばいいかな、とちらりと考えはしたがまだ実行に移していないのに失礼なやつだ。
「でも」
「いいから」
手入れしてもらえば問題ないのに。せめてと目を見開き、涙をにじませた。すぐさま目元に寄せられる唇はひどく乾いている。なだめる様に背を撫で、山姥切を離すまいと抱え込み、目元に口づけて。ただの霊力供給なのに、傍から見たらまるで恋仲みたいじゃないか、と。ふと。もっとも効果が高いのは性行為です、と言い放ったこんのすけを思い出す。そうだ。霊力供給は性行為が最適、と審神者界隈では有名だと。今、山姥切と南泉がしているのは霊力供給で。いや、でも。
人の身をとってからこんなにも誰かと近づいたことは初めてだ、と。気づいた途端、山姥切の全身に熱がまわった。顔が熱い。
固い指先、肌触りのよいシャツ、締め付けんばかりに回されている両腕、山姥切のものより低い体温。胸も腹も、南泉とぴたりとひっつき動けない。身じろいだのが逃げると勘違いされたのか、腰をさらわれ畳に押し倒された。そのままぐるりと転がり、南泉の上にのしかかる形にされてしまう。重いだろうと身を起こそうとするも、下から腕や足を絡めとられ逃れられない。
「な、んせん! おい!」
苦しいと訴えれば手だけ優しくあちこちをさすられた。そうじゃない。痛いわけではないのに、よしよしと後頭部や背、腰を撫でられ居心地が悪い。南泉が動くたび山姥切の胸や腹、どころかその下まで刺激されなんだかまずい。南泉の胴体をまたぐような姿勢のため両脚を大きく開いた状態なのが、よりまずい。口を吸われ、優しく目元に口づけられ、耳や脇腹を甘やかすよう撫でられ、そのくせ両脚を絡めてしがみつくから位置的に大変アレな部分を押しつけてしまっているのだ。わざとじゃない。決して絶対わざとではないが、ぎゅうぎゅうゴリゴリ刺激され、自分でも腰を逃がそうとしているのか擦りつけているのかわからなくなってくる。山姥切と南泉の体格にさほどの差はない。だから肩や腰の位置も変わりなく、つまり山姥切のそこに当たってるのは南泉のそれなわけで。上がったままの体温は未だ下がる気配もなく、こめかみにじわりと汗が浮いた。すぐさま南泉の舌で舐めとられる。ちくしょう、汗も体液カウントか。
山姥切はセクハラするつもりはないのだ。けして。でもこれは、たぶん、どこから見てもアウトでは。なんせ南泉は霊力不足でふらふらなうえ練度一、どう考えても山姥切がやらかしている。
「やまんばぎり」
請う、声。向けられる信仰がしっかりしていた南泉は、おそらく霊力が足りなくなったことがない。それなのに、初対面の、これから主と仰ぐ人の子の前でこのような。ああ、主の前でしっかり挨拶したかっただろう。堂々と名乗りを上げ、戦力になると、この本丸で活躍すると胸を張りたかっただろう。だというのに座ったまま、己が事だというのに会話に参加もせずひたすら耐えて。耐えて。
山姥切の事を高慢だなんて言うが、南泉とていい勝負だ。この矜持の高い刀にとって、誰かに弱った姿を見せるなど、どれほどつらかっただろうか。立てもしないほどふらついて、それでも大したことはないと取り繕って。いついかなる時でも御家を、美術館のモノを背負ってきたその姿勢が好ましいから。そして、そんな南泉が山姥切にだけ助けを求めてくれたので。
「……なんか、おまえ」
「なんだよ。しっかり補給しなよ猫殺しくん」
与えられる限りの何もかもを与えてやりたいと思ってしまうのだ。
この刀が持っていないものなど何もないと知っているのに。
スンスンと鼻を動かしながら首をかしげる南泉にパカリと口を開けて見せれば、迎え撃つように大きく口を開く。のどが動いて、山姥切の唾液を飲みこんだのがわかった。
少しは落ち着いたのか、懐くように首筋や胸元に鼻先を擦りつけられ微笑ましく見守っていれば、南泉の頭はずるずると下に移動していく。絡められていた足がやっと外れたため身を起こせば、そのまま南泉の頭もついてきた。腹に顔をうめられているせいでこそばゆい。鼻先でぐりぐりヘソを押され、つい笑い声をあげればグルグルと喉まで鳴らされる。キミちょっと呪いが強く出すぎてない? それともこれも霊力が不足しているが故の弊害だろうか。
主に確認することリストに脳内で追加していれば、南泉の頭はまだ落ち着きなく動いている。山姥切のヘソに飽きたらしい鼻先が、脇腹に寄り道し下腹に戻り、そのまま股間に突っ込んできたので思わず大声をあげた。おいこれも呪いか!?
「んだよ、補給しろつったのはそっちだろ化け物切り」
「馬鹿か!? 馬鹿なのかおまえは!?? そんなところから唾液はでない!!!」
「体液ならなんでもいいんだろ。ここから霊力の匂いしてんだよ」
「はぁっ!??」
百歩。いや五百歩ゆずって、ほんの少々気持ちよくなってしまっていたことは認める。なんせ唾液を与える行為はどこからどう見ても口吸いなので。キス、どころかディープキスなので。山姥切の口内で南泉の舌が触れていない場所などすでにない。幾度も繰り返し、しつこいほどに舐め吸われたのだ。本日顕現した南泉より先に顕現していたといえ、山姥切もまだ人の身をとって長くはない。誰かとのこんな触れあいなど初めてで。口どころか、抱きしめられたのも、やさしく撫でられたのも。熱を持った重い身体に動けないほど抱きすくめられ、請うように名を呼ばれたのも。息もつけぬ口づけににじむ涙を唇で拭われなどしてしまえば、慣れぬ山姥切が快感を得てしまうのも仕方ない話ではないか。あと刺激されたのが本当にまずかった。男性体として正常な反応ではあるが、あれはいけない。あんな風に押しつけあってぐりぐりされては、そりゃちょっとくらいは元気になってしまうだろう。
だからといって完全に勃起したわけではない。もちろんだ。少し。ほんの少し反応しそうだな、程度だったはず。それを、言うに事欠いて匂いがするとか何事だ。まるで山姥切が粗相でもしたみたいな。
「ちょ、待てっ、さわるな!!」
「動くなよ、脱がしにくいだろ」
「脱がすなって言ってるんだよ!!!」
山姥切にとって不幸な事に、本日は内番着であったためジャージのズボンは勢いよく引き下ろされた。下着ごと。なぜ今日に限って内番着なのか、常の装束ならベルトもあるしもっと脱がしにくかっただろうに。なぜもなにも、主に呼ばれるまで畑仕事をしていたからに他ならない。タイミングが悪すぎる。
勢いよく飛び出したソコは、認めたくないが萎えていなかった。なんならちょっと頭をもたげていた。元気かよ。この時点ですでに涙目だった山姥切は、南泉の口にぱくりとふくまれた時点で限界がきた。いやだって、ダメだろ。南泉一文字が。尾張でトップにたっていた無代の宝刀が。山姥切の陰茎を口にしている。
「なんせん!!!」
引きはがそうにも、動いたとたん歯をきゅっとたてられ恐怖のあまり身が固まった。山姥切がじっとしていれば褒めるようにザリザリと裏筋を舐め上げられ、先をチュプンと吸われる。舌の表面すべてをべたりとはりつけ、竿も先も根元もあますところなく撫でつけまたちゅくちゅくと吸う。内ももが震えるたび柔らかな髪の毛が触れて、今誰が足の間にいるのかその度わかってしまう。気のせいにもできない。さっきまであんなに優しく涙をぬぐってくれていた唇が、熱心に絡ませていた舌が、ひたすら長義に喰らいつき呑み込もうとする。ズボンを引きずり降ろしていた両手はいつの間にか脇腹や腰を撫で、ひたすら山姥切を甘やかしてくれるのに。それなのに、いやだといくら拒んでも聞く耳をもたれない。
愛撫と呼ぶにはじれったすぎる触れ方が、唾液を求めて舌を舐めていた時と同じだと気づいた時にはもう。炯々と光る眼が身を起こした山姥切を見上げる。南泉が。南泉に。
ああ、ちくしょう。
本当にただひたすら乾いて、飢えて。山姥切に性的な衝動を抱いてではないと、こんなにわかりやすく伝えてくるヤツがいるか馬鹿。
「う、……っや、ぁ、っは」
せめてと声はころした。だってこれは霊力供給だから。セックスではないので。
腹を減らした南泉はすべて飲み干したくせに、まだ口内までも侵略する。新たに生産される唾液も涙も、南泉の協力のもと出たのだからと我が物顔だ。
「いっぱい出せてえらいにゃあ」
「ぶった切ってやる」
「唾液のことだぜぇ?」
どちらにしろ、だ。精液だろうと唾液だろうと、気持ちよすぎて大量に出たことを揶揄されたのだから、売られた喧嘩は買わねばならない。一方的に快感を与えられ射精までしてしまった羞恥を怒りに変える山姥切の上に、にゃあにゃあわざとらしく鳴きながら南泉が乗り上げる。かわいらしい語尾も、今はちっともかわいくない。山姥切の機嫌をとろうと姑息な手を使う、とじっとり睨みつければどこ吹く風と向けられる笑顔。少し頬に赤みがさしたな、とつい安堵した山姥切の手足に南泉の体重がぐっとかかる。
「にゃあ、山姥切」
腰を擦りつけられ、やわやわと刺激が送られる。慌てて四肢に力を入れるも、もう遅い。
「本当におまえは、勘もいいし戦意も高い切れ味鋭い刀だってのに、どうにもこうにも甘っちょろいな。油断しすぎだろ、気ぃつけろ」
「喧嘩なら買ってやろう、さっさと本調子に戻れ」
「まだ売ってねえのに勝手に買うなよにゃ。褒めてんだぜぇ? いい刀だって」
おまけにどこもかしこも甘いから助かる、と続けられ膝で股間を蹴り上げようとしていた山姥切はしばし時を止めた。は? いや、は??? この、山姥切を押し倒しているのは確かに南泉一文字だが、え、こいつこんな夢見がちな発言するタイプだったか? いつの間にか俺はどこもかしこも甘い砂糖菓子ちゃんになっていた?? これ尾張ジョークとかそういう可能性あるか???
「……あの、それは……とんでもなくのどが渇いてる時に飲む水が甘いとかそういう……」
「だろうにゃ」
「だよな! よしセーフ!!」
「おっ、まだまだ元気だな。さすが化け物切り」
「まあね、それなりに鍛えているからね」
思わず得意気に笑いかければ、同じく笑顔を返される。かわいいねとからかう前に、だからと南泉は続けた。
「おかわり」
口内だけでなく、舌だけじゃなく。山姥切の全身どこでも。撫でて舐めて食んで引っ張ってすれば求める体液が出ることを南泉は学んだので。そう、山姥切が教えてしまったので。
「おまえの元気が有り余っててうれしいにゃあ」
食欲に身を任せた南泉に全身でのしかかられ、山姥切はつい目を閉じた。閉じてしまった。まるで受け入れるかのように。