★5 汎用性が高いのが良い。洗い替えのため二本追加購入しました。

「にゃ、にゃにゃにゃ~!??!?」
「おや猫殺しくん、どうしたのかな。猫が隠しきれてないよ」
「隠してねえ、つーか猫でもねえ! じゃにゃくて!!」

なんだアレ。今のなに。いや見間違いだよな? なにをどう見間違えたのかわかんねえけど、こいつがあんなとこにあんなもんつけてるわけねえよな!??
すがるように山姥切を見つめても、ニコニコとご機嫌な笑顔で首をかしげられるだけだ。ちくしょうかわいい。オレの恋刀かわいい。もうそれでいいんじゃねえかな。いいか。
なんせここは自室、布団の上、しどけなく浴衣を着崩した山姥切にのしかかるような態勢の南泉、というこのまま進まなくてどうする? というお膳立てされた勝利の地だ。小さなことに引っかかっている場合ではない。
ない、のだけれど。
ダメだ。よくねえ。このまま勢いでガバッとおおいかぶさりあれこれ進めてしまいたいが、そうするとどこかで絶対面倒なことになる。そしてその面倒は百パーセント南泉に降りかかる。これまでの五百年がそう言ってんだ、逃げるな南泉一文字。

ため息をひとつ。
まあ見間違いかもしれないし。理性はありえないと言ってるし希望もあってくれるなと言ってるので、多数決でなかったことにならねえかな。ならねえだろうな。
儚い願いを己で否定しながらも、南泉は再度向き合う覚悟を決めた。こいつと恋仲になろうと思った時点であらゆる面倒事も一緒に背負い込むと決めているのだ。まあそれがこんな面倒事も含むとは予想外だったけれど。
相変わらずおキレイな山姥切の顔、首、鎖骨、白くなめらかな胸元からうっすらきれいに割れている腹筋、その下。
すんなりした陰茎の根本にぐるりと巻き付く、銀の下生えに隠れ切れていない黒い輪。
ある。
やっぱり、ある!!!!!

「おま、それ、その……っ、それは」

どう見ても性具。
南泉はそこまでマニアックな性知識を持ってはいないが、それでもこれが射精を留め勃起時間を長引かせるものだと知っている。
見間違えてはいなかった。コックリング以外のなにものでもない代物が、山姥切の陰茎にしっかりガッチリ装着されている。
なんで。なんでそんなのハメてんだおまえ。実は勃起不全で悩んでたのか? 主に言いづらかったらまずオレに相談しろよ、言わねえだろうけど。つーか言われてもどうしていいかわかんねえけど。でもこんなエロイこと一振りでするくらいなら恋仲のオレに一言でもあるべきでは。
だんだん考えが明後日の方向に逸れていった南泉のことなどつゆ知らず、山姥切は相変わらず機嫌よさそうに胸を張った。

「ああこれ? 猫殺しくんは知らなかったかな」

この山姥切はどうも、何かを教えることが好きな性分らしい。
シール交換個体だから他の刀剣男士と変わらぬ知識量だろうに、山姥切長義たるもの書類仕事に長け政府に詳しくあるべき、という謎のこだわりを持っている。
そういうわけのわからない見栄を張るのがうかつでほっとけねえにゃあ、から目を離せなくなり好意が恋に進んでしまった南泉としては、まあこういうとこもこいつのかわいいとこだけどと常なら笑ってすませるところだ。
だがこれは。
胸を張って得意気にコックリングを見せつけてくるのは、笑ってすましてはいけないだろう。知らなかったかな、じゃないのだ。
しかしこの羞恥心の欠片もない顔、もしや真っ当な理由があるのだろうか。エロい方向ではなく。いやこんな性具をわざわざつける真っ当な理由ってなんだ。それらしき理由があれば他にもいろいろと使わせてくれんのか性具、じゃなくて。
混乱しきり、それでも南泉はほんの少しの希望を胸に問うてみた。

「……それ、なんなんだよ。にゃ」
「射精管理のための器具だね」
「大当たりじゃねーーーーーーーーか!!!!!」

 

◆◆◆

 

うるさいよ、と眉をしかめられても南泉としては当然だろと返すしかない。
想像してほしい。なんだかんだと恋仲になり、手つないで万屋デートしたり縁側でこっそりキスしたりと初々しくステップアップし、明日はお互い非番だからと気恥ずかしくもウキウキ誘い合わせ。とうとう今夜、と布団の上でお互いを脱がせ合えば、出てきたのがコックリング。そりゃうるさくもなるだろう。
これが亀甲ならわからなくも……、いやわからねえけど。服の下の秘密なぞ南泉はちらとも知らぬので。絶対に知らないし今後も知るつもりはないので本当気にしないでほしいんだが。
目の前にいるのは山姥切長義だ。
ドエロ個体でもなく、どちらかというと初心な「性知識くらいあるとも! 俺は『はじめての人の身マニュアル』をきちんと読んだからね」と胸を張った刀である。
それ本丸で顕現したら一番に渡される保健体育の教科書レベルのやつじゃねえか。初心というよりこいつまだ幼いのか……もしやオレは幼児に手を出そうと……? とあまりのピュアさに南泉が悩んだのもそう遠い話ではない。
まあすぐ、いや古刀だしなと思いなおして押し倒しているのだが。今。

「すまないね、外すのを忘れていた」
「いやそこじゃなくてにゃ」
「おや、猫殺しくんは使ってないのかな。俺のは黒だけど他にもいろいろあったよ」
「カラーバリエーションの話してぇんじゃねえんだわ」
「そういえば他に使っているものを見なかったな……やはり人の身に慣れれば不要になってくるものなのかい?」

あくまでも真っ直ぐなまなざしに、これ絶対妙な思い込みしてるやつだなと確信を持つ。
性具だと理解していれば、他に使っている男士の話などしないだろう。南泉に妬かせたいとか恋のスパイス的な扱いをするには、自分たちはまだまだ不慣れだ。なんせ初めての夜なのだから。

 

 

山姥切がこの便利道具を使用することになった発端は、起床時に下着が濡れていたことだ。

「もちろんすぐ夢精だとわかったよ。『はじめての人の身マニュアル』を熟読していたからね」
「あ~、えらいにゃ」

夢精と気づくどころか粗相を疑い折れたくなっていたのだが、そこは省いておく。なんか濡れてる!? と慌てふためき、半泣きで布団や寝間着を確認したのは南泉に言わなくていい部分だろう。ほら、ちょっと寝起きだったから。まさかこの本歌山姥切がおねしょなどするわけないのだけれど、昨夜トイレに行った後に水飲んじゃったなとかうっかり思い出したので。慣れぬ人の身、なにが起こってもおかしくないので。
後始末をしようとした際、妙にねばついているな、肉体の不調かと主に相談しようとしたことも秘密にしておく。
妙齢の女性である主に、男性体の下の話はしにくい。せめて見当をつけてからと思いとどまった己を、山姥切は今でも褒めたたえている。
早朝だから、と誰かに聞く前にまず配布されたマニュアルを開いたのは、本当にファインプレーであった。
聞かれるとしたら人の身に慣れているだろう初期刀か初鍛刀、もしくは気心の知れた徳美の刀であろうか。いくら新刃からといえ、いきなり「朝起きたら下着がぬるぬるしていたんだがこれ病気かな?」と問われても困惑しかない。事実を知ればなーんだと笑い飛ばすタイプならいいが、山姥切は羞恥で折れそうに見えるので伝え方にも気を遣う。
もしここで南泉に問うていれば「オレが教えてやろうにゃあ」と若紫ルート開通か、と思いきや、この本丸の南泉は初心なタイプだったため「にゃ、あ、その、にゃあ~~~……問題ねえ、よ」とそっと『はじめての人の身マニュアル』を手渡してくるだけだったろう。
重ね重ね、すべてのポイントで正解を叩き出したこの本丸の山姥切は相当なラッキー個体である。
そうして彼は、その日はじめて『夢精』というものを知った。

人の子は定期的に陰茎から精液を出さねば、寝ている間に勝手に出るらしい。

なるほど人の子を模している形だからこういった部分も、と納得しつつ山姥切は眉をひそめた。あまりの面倒さに。
そういえば、顕現したばかりで出陣に内番にと忙しかったため、陰茎をこすって精液を出すという行為をうっかり忘れていた。定期的に、とあったがどれくらいの感覚かつかめていなかったのもある。確かに出す時は気持ちいいが、そこに至るまでにかかる時間は暇だし手はだるい、そのくせ快感は一瞬だ。いや、こすっている間もいちおう快感はある。あるのだが、射精に比べれば微々たるものなので億劫なのだ。毎日目新しい物事に興味津々で過ごし、楽しく敵をぶった切っていれば、つい放置してしまうのも仕方がない。

肉体の不調、でないのは良かった。
だが、己の知らぬ間に勝手に出るとか、それは粗相と変わらないのでは?
俺が、俺自身の肉体を管理できないなんて大問題では!?

ここで、じゃあ今後はもう少し頻繁に自慰をしよう、とも、勝手に出てくれてラッキー洗濯だけがんばろう、とも思わず憤るのが山姥切である。
マニュアルをいくら読み込んでも『定期的に自慰をする』以外の情報はない。では、とインターネットの大海原に分け入った山姥切が発見したのは『射精管理』という言葉であった。

「………………それは」

違うやつでは。
百パーセント、確実に、おまえの思ってるヤツではねえぞ。
そう、南泉は言えなかった。タスク管理と同じ熱量で射精管理と口にする山姥切は、おそらく言葉の意味そのままにとらえている。夢精で勝手に射精しないように己で管理する、以外の意味が? と問われて説明しなければいけないのか。なんだその罰ゲーム。
だってこんなに胸を張って。いいこと知ってるんだ猫殺しくんには特別に教えてあげるね、みたいなピカピカの笑顔で。
それでいて口にすることは射精管理である。それはいいことというかエロいこととして世間で扱われているので大っぴらに口にするな、と言ってやらねばならないのか。腐れ縁として。恋仲として。
後から知って恥をかくのは山姥切である。知識が足りなかったね初心者だもんねとやさしく見守られていることに歯噛みするのはこいつで、だけどたぶん絶対、南泉に八つ当たりがくる。ならばそれを避けるために今告げてやるべきか。いやでもこれ今言っても八つ当たり確定のやつじゃねえか?
煩悶する南泉を後目に、山姥切は見て見てと己の携帯端末まで出してくる。

「ほら、こんなに種類が豊富に売られているんだ。人の身に慣れれば不要なのかもしれないけど、やはり一定の需要はあるんだよ」
「どこで手に入れたかと思ったら通販かよ」
「便利だよねえ。注文したら次の日には届くなんて。ほら、俺たちの戦装束なんかもある」

山姥切の陰茎を締め付けているものと同じものが展示されている通販サイトを見せられ、なんとか無難なセリフをひねり出す。頼むからその流れで南泉の戦装束ページを開いてくれるな。あるのは知ってるから開くな。頼む。今後『この商品を買った方はこちらの商品も買っています』で表示されたらどうしてくれる。とんでもない風評被害だ。全南泉一文字が憤るやつだぞこら。
というか、こいつはこのページを見ても気づかなかったのか。
コックリングの説明はともかく、オナホだのバイブだのも一緒に購入を勧められているわけだが。商品説明だけ読んだにしても、山姥切の考える射精管理とは違うだろうに。
ちらりと隣の顔をうかがうも、山姥切は「この商品は価格が手を出しやすくて」だの「もう少し上級者向けのものだと金属もあって猫殺しくん好みのデザインかもしれない」だの業者の回し者のようなことを言っている。価格が安いはいいとして、猫殺しくん好みのデザインってなんだ。コックリングの形に好き嫌いが発生するほど種類があるのか。そしておまえはどんな形状のものをオレ好みだと認識しているんだ。

「あるとも! ほら、これなんか丸い飾りがついて見た目もゴツイ感じだろ。キミ、ゴツゴツした大きめの指輪とか気になってるんだろ。気恥ずかしいならこういう見えないおしゃれから初めてみるのもいいんじゃないか」
「に゛ゃ゛……っ、おま、それっ……」

金属製の輪と球でできた商品の画像を見せられ、南泉は宇宙を見た。
マジか。こいつマジでこれ純粋に好意で商品勧めてんのか。腐れ縁の性教育はどうなっているんだ。本霊は分霊にそういった知識も持たせておくべきでは? いや、本霊はちゃんとわかってるよな?? 戦意マシマシで分霊作ったらうっかり性的な知識入れ忘れてた、とかそういうやつだよな? 待て、そうなってくると山姥切の全個体がなんの性知識もなく送り出されているということになるわけだが、いや、それはさすがに……そんな危険なこと……きっとこいつが特別無知なだけ。他の個体はちゃんと性知識があるはず。南泉専用掲示板でもそんな話題は出たことなかったから大丈夫。……大丈夫、だと思うが後からちょっと問題提起スレッドは立てておこう。恋仲のこの山姥切以外の個体も、古馴染みの身内だということにかわりはないんだから。
ぐるんぐるんと益体もないことが脳内を巡る。何をどう言えばいいのか。南泉がゴツイアクセサリーを気にしているのはお頭かっこいいという憧れからなのだが、それをこの、なんだ。
怒りで怒鳴りつけるには山姥切の顔は好意に満ちあふれすぎていた。本気で百パーセント善意である。こんなにピカピカ頬を光らせ、褒めて褒めてと目で訴えられて、ふざけんなと怒れる南泉一文字は亜種である。そして南泉はどの本丸にもいる一般的な南泉一文字であったので、無下になどできるわけがなかった。
この器具を装着すれば、陰茎の根本から金玉まで金属の輪で締め付けられ、おしゃれだという球で会陰部分を常に刺激されるわけだが、こいつはまったくもって気づいていない。
もし正しい用途を知ったうえで南泉に勧めているのなら、もう何も信じられない。

「……これも買ったのかよ」
「いや、さすがに重そうかなって。それに俺はこれで十分満足してるから」
「そうかよ」
「うん。これすごくコスパがいいし、なにより使いやすいんだ。すっとはめるだけでいいから取り外しもしやすいし、初心者向けなんだろうね。ただもう少しカラー展開があってもいいかな、と思ってレビューに書いてみたんだけど」
「そうか……レビュー!??」
「ほら、ここ。ちゃんと担当者から返信きてるんだ。企業努力が見えて好ましいよね」
「返信!?!??」

確かに星が五つ並んだ後に、使いやすいだの手に取りやすいだの誉め言葉とつけていても目立たないような色合いをと希望している文章がある。おい名前のとこ霊刀って。霊刀っておまえ!!!
自分の事を霊刀と称する刀のうち、商品レビューを書くまめさのある男士がどれほどいると思っているのだ。こんなもの名乗っているのと同義である。返信している担当者とやらも、山姥切だとわかっているだろう返信をしているじゃないか。

「おまえ、こんなもんまで書いて」
「良かった点を伝えられれば次からのやる気になるし、改善点を伝えれば今後もっと自分好みの商品になるかもしれないだろう。伝えない理由はないかな」

そういえばこいつは店のアンケートなどもしょっちゅう書いていた。言っていることは正しいし理解もするが、こと今回に関してはレビューしている場合ではないと南泉は思う。
コックリングだぞ、これ。
山姥切からのレビューだと悟り、それでも返信せねばならなかった担当者に同情する。絶対そんな立場になりたくない。
しかもこいつの使い方は本来意図されたものからずれている。まさか夢精を防ぐために使うなど想定されていないに違いない。あとつけていても目立たないように、ってわかりやすい方がいいんじゃないか。今の黒も山姥切の白い肌や銀の下生に映えて悪くないが、もっと違う色も。
そう、朱とか。材質も、シリコンよりもっと肌触りのいいもので。直接肌に触れるのだ、正絹の方がいいんじゃないか。太い輪ゴムのような形より、そのつどきちりと絞めつけてやれる紐状で。いや紐では食い込んで痛いかもしれない。もう少し幅広で、根元だけでなく幹の部分にも巻きつけてやれるような。
そう、別に使用目的をひとつに絞ることはないのだ。このコックリングでは陰茎を締め付ける事しかできないが、他に活用できる方がいいに決まっている。陰茎だけでなく、他のところに巻いても。手首足首、前、後ろ手、頭上もいい。ああ首に巻けば贈り物の様になるのでは?
たとえば今ここにある、南泉の、帯刀用の帯だとか。
それはもう、目的にぴたりとあっているんじゃないだろうか。

「だからキミも今後はレビューを書くといいよ」
「……にゃあ、山姥切。夢精防止なら寝る時だけでいいだろ、なんでおまえ昼間もつけっぱなしなんだよ」
「猫殺しくんちゃんと俺の話きいてた? 商品を開発してくれている人の子のやる気のためにもレビューを」
「書く書く、次なんか注文したら絶対書く。で、なあ、どうなんだよ」
「確かに夢精は寝てる間だけかもしれないが、起きてる時に突然でないとは限らないだろ? 戦場でいきなり粗相したらどうする、同じ部隊の皆の記憶を消さないといけないだろ」
「もちろん知ってるだろうが殴っても記憶は消えねえからにゃ?」
「うるさいな知ってるよ! ……定期的に自慰をすれば問題ないんだろうが、ちょっと、最近サボってて……いやだってあれ面倒だろ!? つい後回しにしてしまって、だからいつ勝手にでるかわからないから」

勃起ならまだしも射精は自分で意図しないとなかなかできないと思うが、寝てる間に勝手に出た衝撃が強すぎたのか、山姥切は大真面目だった。
ずっとつけている、のだから戦場でもそうだったのだろう。こんなもんつけて敵バッサバサぶった切ってたのかと南泉の情緒はめちゃくちゃだ。どうしてくれる。物騒とエロを同時にぶっこんでくるな。
めちゃくちゃだから。
めちゃくちゃにされてしまったから、もう、これは仕方ない。
まあここは南泉の自室で、山姥切は恋仲で、今晩はそういうことをしようと集ったわけなので。別段だれに申し訳なく思う必要もない。

「つまり、定期的に射精すりゃいいんだろ?」
「そりゃそうだけど面倒って話を」
「オレがやってやるにゃん。恋仲なんだから」

そうだ。いつ勝手にでるか不安なら、絶対でないくらい搾り取ってやればいいのだ。しっかりきっちり。毎晩。
なら山姥切はこんな無粋なものをつけないし、頼らない。

「いや、さすがにそこまでされるのは」
「恋仲なら当然だにゃー」
「え? いやでも」
「にゃあ、嫌かよ? 無理してるんじゃねえぜ。こうしていちゃついてりゃそういうことにもなるだろ」

だからこんなものもういらねえよな、と抱き込みながら黒い輪をつつけば、頬を染めて自ら外す。
そうだよな。そういうことしに来たんだもんな。南泉の部屋に、腕の中に、自らすすんで、山姥切が入ってきたのだ。
ところで昨夜処理したはずの南泉の陰茎はすでにガッチガチに勃ちあがりいつでも発射オーケイの勢いなので、定期的とはおそらく毎晩ということだ。うん、そうそう。間違いない。南泉と山姥切は同じ打刀であることだし、背格好も似ていりゃ作刀年数もほんの数百年ほどしか変わらない。これはもう誤差。つまり南泉と同じ頻度で出せば山姥切も心配ないということだろう。
つらつらと自論を形のいい耳に流し込めば、なるほどとうなずくこの素直さよ。
おまえは本当に古刀か? 山姥切の本霊は分霊に渡す性知識をもうちっと増やした方がいいんじゃねえか?
心配しつつも特に口にはださず、南泉はそれによぉと続けた。馬鹿正直になにもかも伝えずともいいだろう。そのうちどこからかちゃんと正しい知識を得て、また喧嘩を売ってくるんだろうこいつなら。

「まず出さずに我慢する練習すべきじゃねえか? ほら、筋肉と一緒だ。限界ギリギリまで使って、回復してを繰り返して強くなるもんだろ。人の身なんだから」
「確かに! 俺としたことが対処療法だけなんて弱腰だったな。いきなり出るのを防ぐより、まず出ないように鍛えるのか」
「そうそう。精液が出そうな時に、出さないようぐっと我慢できるようになりゃいいわけだ」

だから、と朱色の帯をたぐりよせ、南泉はにんまり笑った。

「今日から毎晩鍛えようぜ。俺も誠心誠意、全力で協力してやるよ」

 

翌朝、寝起き一番に南泉はネットを開き通販サイトにレビューを書いた。
山姥切との約束通り。