「いれるから、にゃ」
ぐ、と押しつけられる熱。うなずくまでこのまま動かないのを知っているから、長義は必死に頭を振った。
「大丈夫か?」
「いいから、もう」
動けよ、と腰を揺らせばぐっと息をつめる音がした。大丈夫って言って、……はないけどわかるだろバカ。
は、は、という短い呼吸音。南泉の陰茎が、長義のナカをゆっくり押し広げていく。身体の真ん中から裂けるような心持ち。後ろから南泉に抱きしめられているから、長義の身体は左右に分かれていないのかもしれない。そうじゃなけりゃとっくにバラバラだ。慣らして慣らしてやわらかくなった孔が、大喜びで南泉を受け入れる。ゆっくりゆっくり。指も届かないような奥に南泉を感じると、とてつもない達成感があふれた。
ふは、と一呼吸する音が聞こえる。長義に慣れる時間を与えるため、いつも南泉はここで一旦止まる。気にせず動けと何度告げても、うんうんと頷かれるばかりで変わらない。身体の奥まで拓ききり、南泉の熱と硬さを胎で実感し、動けと長義から求めるまでけして動かない。以前、まだ慣れない頃、痛みを無視したため流血沙汰になりかけたのは確かに長義が悪い。だがここまで慎重にならずともいいのではないか。長義の胎は、ナカは、もうとっくに南泉に突いてほしくてキュウキュウ媚びている。
後ろ手に太ももを叩いてやろうと探れば、きゅっと握りしめられる。
「どした? ちょーぎ」
甘ったるい声と同じくらい甘ったるい行動。別に手をつないでほしかったわけじゃないのに、なのに、いかにもかわいいと言わんばかりの声音はずるいんじゃないか。
動け、と一言告げればいいだけなのに、荒い息ばかりでろくな声が出ない。まだ挿入したばかりで南泉はちっとも気持ちよくないだろうに。こんな段階で息をきらしている場合じゃないのに。言え。おまえはなんのために肺を鍛えているんだ山姥切長義。美しくクールに「そろそろおまえも我慢の限界だろう? 動いてくれてかまわないよ」と言え。手を取られてきゅんとしてる場合じゃないだろう!
「っ、あ……なんせ、ん」
「うん、気持ちいいぜ」
ず、ず、ず、と憎らしいほどのんびり抜けていく陰茎が腸壁を撫でていく。ぽかりと空いてしまった隙間が寂しくてつい声をあげれば、痛かったかと問いかけられる。バカ。そんなはずがないだろう。おまえどれだけ丁寧にしつこくねちっこくほぐしたと思ってる。そもそも長義の反応でわからないのか。と叫んでやりたいが、気持ちよすぎて涙でぐちゃぐちゃな顔など見せるわけにいかないので、枕に埋もれた頭を振るしかできない。せめてこの熱で伝われとばかりにつながれた手を握りしめれば、返事のようにきゅむきゅむと握り返された。
「痛くは、ないんだな?」
「ああ。……はやく」
胎内に陰茎をみっちり詰められ、押し広げられ、腸壁をゴリゴリこすられる。じれったいほどの緩やかな動きは、長義のナカを南泉の形に作り替えるようだ。勢いに任せて突いてくれてかまわないのに、穏やかすぎる抽出は、ひたすら快感を溜める事しかできない。
「も、いいって」
「なんで。おまえも気持ちよくなれよにゃ」
「俺はいいから」
頼むから早くイってくれ、と言ってしまいたい。そんなこと言えば興ざめだろうから言わないけれど。
別に南泉が遅漏だとか、早くセックスを終わらせたいというわけじゃない。肉体が許すなら、いくらでもイチャイチャ挿入していてくれてかまわない。
「でも」
「俺がいったら固くなるだろ。後からちゃんと気持ちよくしてもらうから」
「……にゃあ」
情けない声を出す南泉には申し訳ないが、仕方ない。長義が先に射精してしまっては、尻の穴が固くなり南泉のものが入らなくなるのだから。
セックスしようと決めた時に、二振りできちんと調べた。
人の子がしているのを見たことしかなかったし、お互い男は初めてで、だから一緒に学んでいこうと。
調べてよかったと、今でも思う。だって、射精すると尻の穴が固くなる、なんて知らなかった。ただでさえ狭い穴なのに、これ以上固くなってしまっては陰茎を挿入するなんて無理な話だ。だからきちんと、南泉が射精して、その後に長義と決めた。
おまえにだけ負担をかけたくはない、せめて慣らすくらいはしたいとねだるから、長義は洗うだけ。負担だなんだなんて、別に気にしないのに。尻を洗う時に一緒に慣らすくらい問題ないと伝えても、ならオレがしてもいいだろと返されては突っぱねるのもおかしい気がして、以来ずっと南泉にお任せだ。にゃあにゃあねだる南泉はかわいかったから、したいならいいけどとつい譲ってしまった。それを今は、後悔している。
だって、気づいてしまったから。
陰茎が入らないくらい固くなる、ということは。もし南泉が挿入している時に長義が射精してしまったら。
痛い、ならいい。よくはないが、そういうこともあるだろう。だが……締め付けすぎて、南泉の陰茎がちぎれてしまったら。
手入れ部屋に入ればなんとかなるだろう。ちぎれた腕も戻るのだから、南泉の陰茎も新たに生えるに違いない。それを手入れさせられる主や消費される資源については考えないものとする。だが、長義の尻に残された南泉の陰茎(旧)はどうすれば。本人にはすでに陰茎(新)が生えているのだから戻すわけにいかず、だからといって長義の尻の中で第二の生を過ごされても困ってしまう。ずっと南泉が中にいては落ち着かないだろうし、改めてセックス、となっても挿入するスペースがない。だが何も欠けていないのに手入れというのも違う気がする。そもそも手入れして尻から陰茎は除けるものなのか? その場合、玉鋼として隣に置かれるのか。陰茎の形のまま在るなら、少々気まずくないだろうか。
南泉に相談しよう、と思ってふと。ふと、長義は思いついてしまった。陰茎を引き千切られる可能性のある相手とセックスしようと思うだろうか、と。
おまえを抱きたい、おまえの中に挿入したいと口にした南泉はかわいかった。求められてうれしかった。なのに、長義とセックスしたくないと思われてしまうのか、と。そもそも気持ちがどれくらいあっても、本能が、陰茎が引き千切られるかもしれないと思って勃起できるものなのか。
だから黙った。伝えなかった。求められてうれしかったから。やらないと言われたくなかったから。
南泉が先に射精したらなんの問題もないからいいだろうと。練習、で尻に指を入れられたときちっとも気持ちよくなかったから大丈夫だろうと。射精をこらえるくらい、たいしたことないと思って。
本当に、長義は、心底悔いている。
慣らすだけでこんなに気持ちよくなるなんて、どの指南書にも書いてなかった……!!!
「長義、ちょーぎ」
甘ったるい声が耳から流れ込む。腰をもってさっさと打ちつければいいのに、ぺたりと上半身を長義の背にひっつけごろごろと首に懐く。少し皮膚がかたくなっている指先がすりすり腰骨をなでた。ぐちゅん。奥までローションを塗り広げたいのか、押し込んでは先端をぐりぐり押しつけられる。
「あ、っあ、……うぁ」
「かぁわいいなぁ、おまえ」
逃げる身体が上から押さえつけられる。奥ぐりぐりしないで。やだ。かすれた声でうったえるも、南泉はうんうんと機嫌よく相づちを打つだけでちっとも抜いてくれない。支えていた腕の力が抜け、上半身が布団に倒れる。慌てて支えてくれた南泉の腕が、腹をおして長義は思わず悲鳴を上げた。
「悪い! 痛かったか?」
分厚い手のひらでなでられる。へその穴に指がひっかかる。ひっぱられて、寄って。よしよし、なんて軽くもみこむように腹をなでられ身をよじる事さえ一苦労。
「い、たくない。痛くないから、それ、やめ……ッ」
「ならいいけど、にゃ」
なんとか上半身を起こせば、手伝うつもりか両腕がぐっとからまる。よつんばいから膝立ちになり、上半身を抱きしめられた。
「ちょ、この体勢は」
「オレの上のって動くのはしんどいって言ってたろ。これならオレが動いてやれるし」
確かに以前騎乗位を試した時は、南泉がなかなか射精せず泣き言をいった覚えがある。だがあれは、長義のつたない動きでは南泉がいけず、ローションも流れ出すうえ乾いて時間ばかりかかったからだ。
「後ろからがおまえに負担のかからない体位だもんな」
そうだ。だから騎乗位の時も寝転んだ南泉に背を向けて乗った。今も背後から抱きしめられるような体勢で。
いや、これラクか? 負担がかからないってどこにだ。少なくとも長義のナカは、いつもより南泉を深く受け入れているためぎちぎちに拓かれている。
脇の下から回された南泉の腕が、長義を持ち上げる。同時に南泉の腰も引かれ、ぐぽんと栓が抜けるような音がした。前立腺を南泉の陰茎がずるずるこすっていく。長すぎるんだよバカ、と罵る前に耳に熱い息がかかった。腸壁全体がこすられ前立腺がぐにぐに押されっぱなしになる。なんで。どうしてこんなにボコボコしてるんだ。先がちょっと太くなってるだけで、竿部分はなめらかなもんじゃないのか普通。一般的な陰茎は。少なくとも長義のはそうだ。自分で慰めたことがあるからわかっている。いや、南泉のものとてそんな特殊な形状はしていなかったはず。最近はもっぱら胎に収めているが、長義の後孔が慣れるまではお互いの手で慰めあっていたのだから。
南泉のものを具体的に想像してしまい、思わず絞めつけてしまった。うにゃ、なんて声がうれしくもむかつく。おまえこれはそんなかわいらしい鳴き声のブツじゃないだろう。もっとツルッとしてスマートでピンク色のかわいい感じだ、その声なら。
南泉の陰茎は、ゴツゴツボコボコまでは言わないが、先端がしっかりしていていかにも掻き出しやすそうな見た目をしている。何をどう掻き出すかは口にしないが。これを収めきるなんて我が尻ながらすごいな、とちょっと自画自賛したくらいだ。でもおかしいな。竿部分はスッキリスタイリッシュなイメージだったんだが。……もしかして、先がどっぷりしているためにしっかり太い部分もスマートに見えていた?
「……視覚の罠……」
「マジで大丈夫か、おい」
水飲むか、と労わる気持ちがあるなら抜け。いったん抜いてからペットボトルを探してくれ。もしくはさっさと射精しろ。
南泉が身じろぎするたび、長義は突かれたり揺らされたりと落ち着く暇がない。過敏になっている腸壁も、押されっぱなしの前立腺も、セックス真っ最中だと理解しているから快感を素直に受け入れるばかり。これで射精してはいけないのだからとんだ我慢大会だが、南泉に悪気は欠片もないのだ。心底、長義を思いやって動いてくれているのがわかるので何も言えない。焦らしプレイのつもりだった、と言われたら許さないがまるでそんなことはない。それくらいはわかる。
だから長義は、早く射精しろと願うしかない。おまえの陰茎を引き千切りたいわけじゃないんだ。
◆◆◆
好きだ、と言ったのは長義からだ。
己より少し遅れて本丸に顕現した腐れ縁があまりにキュートだったので、これはとりあえず確保しておかないといけないと逸りすぎた自覚はある。
顔を合わせたとたん告白を受けた南泉は、右を見て、左を見て、自分の背後を見、己以外の誰もいないと確認してからようやっと「オレ?」と首をかしげた。そのあまりの稚さに、今告白した己は正解だと長義は胸躍らせた。だってこんなにかわいく真っ白でピュアな猫殺しくん、ちょっと万屋にでも放ってみろ。すぐさまどこぞの山姥切長義たちにぺろりといかれてしまう。シール産ではあったが長義は己の同位体についてしっかり理解していたので、迅速な行動をとった。
「好きって、そりゃオレも嫌いじゃねえけど」
「じゃあおつきあいしよう! ゆくゆくは恋仲になりたいから、そのつもりで俺をみてくれないかな」
「お試し期間ってことかにゃ?」
「そう。まあ、この俺とつきあって別れたいと思うわけがないだろうけど」
「なら最初から恋仲のがよくねえか?」
「え? いいのか?」
「だってどうせそうなるんだろ?」
「当然かな」
「じゃあわざわざ回り道する必要ねえだろ」
あまりにうれしくて主にその場で報告すれば「え、ちょっと席はずした間になに、なんで!? いや恋仲はいいけど南泉さっき来たとこだよね!?? おめでと???」と祝いの言葉をもらった。心の広い、いい主だ。
恋仲なら、とデートをした。手をつないで歩いて、お互いの好みそうなものをプレゼントしあって、好意をきちんと言葉にして。公共の場であまりイチャイチャするものではないよ、と警備課の同位体から注意されたのでそれからは二振りの部屋でだけひっつくことにしている。隣に座るくらいならいいんじゃないかと徳美の皆は言ってくれたけれど、近づけばつい南泉の癖のある髪やかわいい頬を撫でてしまうし、あちらも長義の髪に触れたり首にすり寄ったりするので。こういった行為をイチャイチャと言うのだ、とあの同位体に教わらなかったら知らぬまま恥をさらすところだった。危ない。山姥切長義たるもの、公共の場で眉をひそめられるような行動をするべきではない。パブリックイメージというものもある。「うちの長義はわりとふわっとした個体なんだね」なんて主に言われている場合ではない。でも猫殺しくんは確かによそに比べてふわっとしている。かわいい。第一印象からキュートを極めてきただけある。
以来、まず調べてから行動を長義は心掛けている。浮かれて気持ちのまま動いてはまた「イチャイチャしている」と思われてしまう。南泉と恋仲になれたことはうれしいが、長義はまず戦のために降りたのだ。恋にのめり込んでいるなんて思われるわけにいかない。南泉も理解してくれたから、二振りは、二振りだけで恋仲としての自分たちの関係を深めた。
ここに問題はない。ただひとつ、南泉も長義も、わりとピュアな個体として顕現したということが、少々問題となった。
恋仲だ、となれば性行為も行う。二振りで相談し、刀と鞘を決め、共にやり方を調べたのはよかった。問題は、お互い初心者なうえ経験値がなさすぎて、応用がきかなかったことである。
鞘に挿入するには後孔をほぐさねばならない。射精すると後孔がしまる。ならばスムーズな挿入のため、鞘は刀の抜き差し中は射精してはいけない。
ひとつひとつは調べた通りだ。なにも間違いはない。だから二振りは、南泉が長義に挿入するために、長義がそれまで射精しないようにした。もちろん長義だけが我慢するわけじゃない。ただの順番。南泉が先に射精して、その後に長義。
最初はうまくいっていた。どれだけ丁寧に慣らしたといえ、南泉の逸物を受け入れるのは苦しい。精神的にはとんでもなくハッピーだったけれど、尻の穴としてはとんでもないダメージを受けた。楽な姿勢だからと後ろから挿入したから止めなかっただけで、直前のアレを見ていたら絶対やめたレベルだ。セックスは挿入だけじゃない、と説得したに違いない。おまえ手で擦りあっていた時と違いすぎないか? 南泉の陰茎があんなとんでも成長をすると知っていれば、挿入に挑むなんてできなかった。
なんせとにかく痛い。穴の縁は限界を超えて伸びたし直腸はゴリゴリこすられて身体が半分に裂けると思った。指が届かない奥までねじ込まれゴンゴン突かれた時には、なにが起こってるのか考えるのも疲れ切っていて無理だった。それくらいしんどくて、きつくて、痛くて。でも絶対もう一度やろうと決めた。なんせ南泉からの愛をめちゃくちゃに感じたので。
甘ったるい声で名を呼び、かわいい好き気持ちいいとにゃあにゃあ鳴く恋刀を逃す愚か者がどこに居る。あまりにもかわいい。愛おしい。しかも南泉がだした後はちゃんと長義のものをこすって射精させてくれる。抱え込まれ頬や額に口づけられながら陰茎をこすられ射精するのは、とんでもない幸福感だ。賢者タイム、なにそれ? と言わんばかりに世話もやいてくれる。ぐったりしている長義の身体を拭き、洗いたての寝間着を着せ、ふかふかの布団にうもれながら「かわいいにゃあ」「気持ちよかった」「ありがとうにゃ」だ。最高。絶対手放さない。
つまりとにかく、長義は満足していたのだ。南泉とのセックスに。
そして、長義が痛みをこらえていることに気づかぬ南泉ではない。長義とてごまかせるとは思っていないし、ごまかすつもりもない。ただそれ以上に幸福感が半端ないので気にしていなかったのだが、やはり気にはなったのだろう。なんとか痛みをマシにしようと後孔をしつこくしつこくほぐすし、もういいと言ってからも慣らしまくる。挿入してからも、あちこち撫でたり口づけたりと気を痛みからそらさせようと、一生懸命だ。それもかわいいし、長義のために色々してくれるのはうれしかったので気にしていなかったのだが。
回数をこなすうちに、なんというか、慣れ? 痛みよりも快感を得られるようになってきたのは、望むところなので南泉にも情報共有した。セックスは二振りの共同作業なので。あと、なにごとも話し合いが大切なので。痛みを与えていることを気にしていた南泉はよろこんだし、長義も前向きに気持ちいい時は伝えた。二振りの閨事情はいい感じに回っていたのだ。
ただ問題は、南泉が射精する前に長義が射精してはいけないということだ。
だって鞘である長義が先に射精しては、孔が固くなってしまう。ふわふわであったかくてやらかくて、と褒めてくれている直腸が固くなってしまっては南泉の気持ちよさも半減。なんなら動かせなくなってしまうのではないか。だって最初は指一本すら入らなかった固い穴である。それをせっかく挿入したら気持ちいい南泉専用の鞘にしたのに、長義が射精することによって台無しにしてしまうなんて。
ここで長義の人間歴が浅いことが顕著に出てしまった。固くなる、といっても筋肉が収縮して挿入しにくくなる程度だし、なんなら先に鞘が射精して緊張をほぐすという方法もあり、と知らなかったのだ。調べたときにそう書いてあったので、人の身はそういうものかと丸っとそのまま信じ切ってしまった。
だから南泉より先に射精するわけにはいかない。南泉が射精した後ならいいけれど、射精する前は絶対にダメ。射精したら南泉の陰茎を引き千切ってしまう。そんな悲劇を起こすくらいなら、いくらでも長義は我慢できる。
絶対に、南泉より先に射精するわけにいかない。
ぜったいに。
◆◆◆
「だめ、あ…っ、あ、……なん、せ」
「うんうん、気持ちいいよにゃあ」
あぐらをかく南泉のひざに座り込む形でもがく長義の胎を、熱い手がやわやわ押す。
気持ちいい。でちゃう。いく。ダメ。だめだ。だってまだ南泉はいってない。でも。
「っ、もう、出せよばかぁ……ッ」
今にも射精してしまいそうな己の性器をぎゅっとつかみながら、長義は泣いた。
「……おまえほんと、おねだり上手だにゃあ」
「は?」
「かわいい。かぁわいいなぁ、ちょーぎ」
百パーセント文句であったし、ねだるというよりなじったつもりだし、そもそもおねだりとかしたことない。しかしとろっとろに甘い声でかわいいと言う南泉がとんでもなくかわいかったので、つい長義は黙った。本当にかわいさ一点突破でなにもかもをなぎ倒す男士すぎる南泉一文字。
おまえの方がかわいいよ、と口にする前にぎゅっと抱きしめられる。
そのまま前に倒れ、尻だけを高く上げた姿勢でガツンガツン突かれ、目の前が真っ白になる。ヤバい。でる。ダメ。単語しか脳内を巡らない。それでも、とにかく、南泉のちんこを尻でちぎるわけにはいかないという義務感で、長義はぐっとおのれの陰茎をつかんだ。射精だけはしてはいけない……!
「ちょうぎ……ッ」
胎の中に温かい感触。
もういい、と理解したとたん長義の手もとぷりと濡れた。
ああよかった。危機一髪だったけれど、なんとか今回も耐えられた。俺はちゃんとおまえのちんこも守ってやったからな。これからもしっかり守ってやるからな。
「……すきだにゃあ」
「俺も好きだよ」
この後、中に精液を出された刺激によって射精してもよい、と長義の身体が学んでしまうことも。陰茎に手をやる仕草がまさか我慢のためとは思わず、痛みを紛らわせるため自分でしこっているのだと誤解していた南泉が、もっと気持ちよくしてやらねばと燃え上がるのも。イキたいのに留めすぎて精液を出さずメスイキするように肉体が変化してしまうことも。
長義も南泉も、まるで予想しないことであった。
